出産時の呼吸法|スムーズなお産のためのポイントを助産師が紹介

「出産の呼吸法の練習はしておいた方がいいですか?」

「どうすれば出産の時に楽に産めますか?」

出産時の呼吸法は、陣痛の痛みを和らげたり、赤ちゃんがスムーズに生まれてくるのを助けたりする大切なテクニックです。
正しい呼吸法を身につけることで、リラックスしやすくなり、出産への不安も軽減できます。

代表的な呼吸法には「ラマーズ法」と「ソフロロジー法」があり、それぞれに特徴やメリットがあります。

本記事では、呼吸法の目的や効果、具体的な方法をやさしく解説していきます。

私は助産師として、3,000人以上のママと赤ちゃんの出産・育児をサポートしてきました。
助産師としての経験をもとに解説するので、ぜひ参考にしてください。

出産時の呼吸法の目的と効果

出産時に呼吸法を行うのは、単なる「リラックスのため」ではありません。
実は、赤ちゃんとお母さんの体にとって大きな役割があります。

  • 赤ちゃんへの酸素供給
    お母さんが深く呼吸することで、胎盤を通じて赤ちゃんに酸素が届きます。逆に呼吸が乱れると酸素が不足し、赤ちゃんが苦しくなることも。
  • お母さんのリラックスと疲労軽減
    痛みによって体に力が入ると、さらに痛みを強く感じてしまいます。呼吸法を使うことで体の力を抜き、痛みを和らげ、体力の消耗を防ぎます。
  • 痛みの緩和と集中
    呼吸に意識を向けることで、痛みから気持ちをそらし、冷静に陣痛に対応できます。
  • 出産の進行を助ける
    体がリラックスすると産道がやわらかくなり、赤ちゃんが下がりやすくなります。
  • 心理的な安心感
    妊娠中から練習しておくと「出産に向けて準備ができている」という自信につながり、不安をやわらげます。

呼吸法の基本ポイント

  • 息を「吐く」ことに集中する
    深く長く吐くことを意識すると、自然に新しい空気が入ってきます。これでリラックス効果も得られます。
  • 体の力を抜く
    特に肩・あご・股関節・お尻を意識してゆるめると、赤ちゃんが降りてきやすくなります。
  • 陣痛の波に合わせる
    陣痛が強い時は呼吸を工夫し、弱まった時は自然な呼吸に戻して体力を温存します。
  • 赤ちゃんを意識する
    「呼吸で酸素を送っている」とイメージすることで、精神的にも落ち着けます。
  • 練習とイメージトレーニング
    突然の本番に慌てないよう、普段から繰り返し練習することが大切です。
助産師モカ
助産師モカ

出産時の呼吸のポイントは、ゆっくり・深く・リズムよく行うことです。
呼吸が浅くなると、緊張や痛みを感じやすくなるため、意識して呼吸をコントロールしましょう。

ラマーズ法の特徴と呼吸法

ラマーズ法は「心理的無痛分娩法」と呼ばれ、痛みに対する恐怖心が痛みを増強するという条件反射を軽減することで出産時の痛みを和らげようとする自然分娩法で、「ヒッ・ヒッ・フー」と呼ばれる独特の呼吸法が知られています

ラマーズ法の基本的な呼吸パターンは、出産の進行段階に合わせて変わります。

  1. 陣痛が弱くて間隔が長い初期段階では、痛みがない間はリラックスした自然な呼吸を行います。
    痛みの波が来たときには、吸う息と吐く息を同じ長さでゆっくり数を数えながら呼吸することが基本です。
  2. 陣痛が強くなってきた中期以降は、「ヒッ、ヒッ、フー」というラマーズ法独特のリズムに切り替えます。
    ここではヒッヒッと短く小刻みな息を吸い、フーで長く吐く呼吸を繰り返します。これにより痛みの波に集中しやすく、リラックスが促されます。
  3. 分娩本番では、いきむときに腹圧をかけながら赤ちゃんを押し出すイメージを持ち、呼吸に全集中します。
    目を閉じずに呼吸を続け、頭が出た際には助産師の指示でいきみの衝動を抑えて自然な呼吸に戻します。
助産師モカ
助産師モカ

ラマーズ法は出産の進行に応じて呼吸パターンを変え、痛みを和らげることを目的としています。

ソフロロジー法の特徴と呼吸法

ソフロロジー法は、ヨガや瞑想の考えを取り入れた方法で、穏やかな出産を目指します。

基本的な呼吸法は、主に腹式呼吸を使い、「息をゆっくり長く吐く」ことに重点を置いています。
具体的には以下のように行います。

  1. 基本の呼吸法(出産全体を通して行う)
    お腹を膨らませながら鼻からゆっくり息を吸い込み、お腹をへこませながら口からゆっくり息を吐き出します。
    練習時にはお腹に手を当てると、呼吸の際のお腹の膨らみやへこみが感じ取りやすくなります。
  2. リラックス状態を作る呼吸法(陣痛初期)
    陣痛が始まり痛みが感じ始めたら行います。自然に鼻から息を吸い、20~30秒かけて口からゆっくり息を吐きます。
    痛みが遠のいたら基本の呼吸に戻します。
  3. 陣痛が進んで痛みの位置が下がった時の呼吸
    分娩が進み、痛みを感じる位置が下がってきたら切り替えます。
    口から力強く息を吐き切り、素早く息を吸い込み、数秒間息を止めます。
    体の緊張を和らげ、産道を柔らかく広がりやすくする効果が期待できますが、長く息を止めすぎないよう注意が必要です。
  4. 赤ちゃんを娩出する際の呼吸法
    口から深くゆっくり息を吸い、同じくらいゆっくり吐き出します。
    息を吐き切ったら再びゆっくり息を吸い、新鮮な酸素を赤ちゃんに送り込むことを意識します。
    息を止めずにいきむのがコツで、助産師のアドバイスに従って自然にいきみます。

まとめ

出産時の呼吸法は、ママがリラックスしながら赤ちゃんに酸素を届け、出産をスムーズに進めるための大切な方法です。

ラマーズ法・ソフロロジー法のどちらも目的は同じですが、考え方やスタイルに違いがあります。

妊娠中から呼吸法を練習し、当日は助産師さんと一緒に安心して出産に臨みましょう。